「だからそれは誤解の誤解じゃないでしょうか?・・(汗)」
「人間関係は良い誤解か、悪い誤解」
落語家、立川談志が残した言葉。
この仕事をしていたら、つくづくそう思う事に遭遇します。
大前提として、悪意を持って仕事をしている人はまずいません。
しかしながら、善意を以ってした行動が必ずしも報われるとは限らないのです。
それは諸行無常の世界。
人間関係は誤解で成り立っている。それがわかれば腹に落ち納得ができることでしょう。
営業は「口は弁護士、心は詐欺師」なんて揶揄されることがあります。
相手の為にするからこそ成り立つ職業であって、自己の利益の為だけにすればただの詐欺というのは、言い得て妙です。
建築現場は多数の関係者が出入りしており、つまりそれは人間関係も入り乱れている事になります。
そうなると、そこ(現場)は「誤解だらけ」の状況です。
その状況下で発生するのが「トラブル」です。
細かく言えば、トラブルにも色んな種類があります。
【施工・伝達・発注・納品・工程・近隣】などなどなど。
誰にも非の無い【天災・自然現象】などもあります。
十五年ほど前にこういう経験をしました。
施主様が両親の家をリフォームしたいとの申し出があり、仕事をいただきました。
水回り設備から壁紙・照明・外壁の塗り替え・床の張替えなどのリフォーム全般工事です。企業努力もして、勉強させて頂いた見積もりで施主様も納得して頂きました。
工期は天候も考慮して一か月ほどで余裕を見ており、段取りも問題なく工事が始まりました。
すると、二週間程経って現場から「工事がもう終わりそうなんだけど」と連絡が入り、見に行くと本当に終わりかけていました。
自分:「早すぎない?」と聞くと、
職人:「暇をしてた職人がいたからみんな呼んで早く終わらせたよ」という。
当時、たまたま職人連中の手が空いていたので、すべての工事が早く終わったという状況でした。
ここで嫌な予感がするのが私です。
自分:「早いのは有難いけど、早すぎたらお客さんが逆に不安に思うだろう?」
職人:「なんで?早く終わったら早く住めると思ってみんな頑張ったんよ」
自分:「それはわかるけど。工期決めてるんだから。早くなるなら報告せんと」
職人:「でもいつも現場で早くしろ、早くしろって俺らに上から言うやんか。」
自分:「その現場が遅れてたからだろうが。誰がここでやれって言ったんだよ。」
到着して2分でNATO✕ロシア状態です。
施主:「ど、ど、どうしたの?」
案の定、
施主:「二週間で終わるの?大丈夫?早すぎない??」
事の事情を説明したら、みんな納得して笑っていましたが、話の手順を間違えれば戦争になりかねない事でした。
これ、誰も悪くないんです。
良かれと思ってみんなが動いた結果、みんなが不安になったパターンです。
善行は伝えなくても相手はわかってくれるという思い込みがこの結果になったのです。
これが「悪い誤解」です。
こういう事例はどこの会社や職場でも皆さん経験があることでしょう。
人が多ければ多いほど誤解もどんどん増えていきます。
とどの詰まり、全部ヒトがやることなので、よくも悪くも誤解はつきもの。
お客様との人間関係が良い誤解なら、ずっとそのまま良い誤解のままでいて欲しいと常々願っております。