石川 暁章

「ドグラ・マグラ」

 

「うーん・・なにかが違う気がする。・・もうちょっと・・なんか、こう・・ね?・」

 

これ、よくあります。

 

打合せで間取りや色を決めるときに皆さん悩みます。

お客様の意図を反映させるため、理想の形にするため、資料やパソコン画面を見ながら、これでいいかな。あれにしようか。やっぱり違う。いろいろ試行錯誤します。

 

仕事や私事、関係なく、一番難しいのは言葉で頭の中のイメージを正確に相手に伝えることです。しかし的確な言葉がなかなか出てきません。

三島由紀夫のように、すべての人に同じ情景を抱かせられるような才能の一欠片でもあればいいのですが。

こればかりは自分自身の語彙力の無さだといつも痛感しています。

言葉を知らない事と、言葉の意味を理解できていないから、頭の中の絵を言葉にして正確に伝えられない。

人と話をする仕事柄、わからない言葉があれば理解するために机の上には国語辞典を置いており、お客様にはできるだけ組解いて、わかりやすくお話をするように心がけています。

 

 

たまにですが、会議や研修事で専門用語やよくわからん横文字を交えられて、上から話をされることがあります。

 

ハイレベルな教育を受けて、意味もわからず感化されているだけでは?

難しい言葉で喋って賢いと思われたいだけでは?

相手が理解できない単語を使って、理屈をこね回して自分の優位性を保ちたいだけでは?

相手に言葉が伝わらなければ、結果、犬や猫、馬や鹿が鳴いているのと同じ。

受けた方は「馬鹿が鳴いている・・・腹でも減っているのか?」としか思えないのです。

 

最近、マインドという言葉を使っているのもよく耳にします。

会社マインド・経営マインド・営業マインドなどなどなど。

要は「意識・精神」の事でしょう。

会社の精神、経営の精神、営業意識、と言ったら何か問題があるのでしょうか?

大日本帝国の精神論を連想させ、聞く人にハラスメントを想起させるとでも?

だとしたら、そう感じている精神(マインド)が弱いだけでしょう。

はるか昔から日本語として意味を成している言葉。

何語で言われても、脳内で日本語に変換して意味を理解するなら、最初から日本語でいいじゃないかと思っている私もあなたも結局、とどのつまり合理的な日本人なのです。

言葉に新しいも古いも関係なく、状況判断した上で的確かどうかだと思います。

 

注文建築とはまだ見ぬモノをイメージしながら共同で作っていく仕事です。

今そこにあるモノの説明だけではありません。

当たり前の事かもしれませんが、大事なのは「誠意ある言葉」であり、言葉による意思疎通からの相互理解だと思っています。

 

仏教に「初心」という言葉があります。

お客様は家を建てる事は初めてです。そのお客様の家を建てる私も初めてなのです。

同じ土地は二つと無く、同じ家も二つと無いのです。

過去の経験と知識を活かしながら、知恵を使い、新しい初めてに向かっていく。

どの職業にも当てはまることだと思います。

 

常に、初心の緊張感を忘れずに、いろんな何かを少しずつ克服しているつもりですが・・・

 

 

「うーん・・なにかが違う気がする。・・もうちょっと・・なんか、こう・・ね?・」

 

 

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